| 中日貿易関係と東アジアの地域協力について(要旨)(王毅大使、日本貿易会第290回常任理事会にて) |
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| 2004/11/18 |
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中日貿易関係の現状 中日貿易関係については、数字を挙げながら話を進めたい。 第1に、2003年の中日貿易総額は、1,300億ドルに達した。2004年は、1,700億ドルに達する見込みである。 第2に、2004年1−9月の中日貿易は増加しているが、貿易相手先別にみると、EUが第1位、米国が2位、日本は3位に落ちている。貿易相手先別上位10ヵ国・地域では、中日貿易の伸び率が前年同期比27%増と、その中で最も低くなっている。加えて中国全体の貿易額に占める対日貿易額の比率は、かつて20%以上を占めていたが、徐々に減少し、本年1−9月では前年同期比1.1%減の14.7%まで下がっている。 中国への直接投資に占める日本の比率も下がっているようで、現在は8%程度である。他方、韓国を例にすると、対中投資が堅調に推移しており、2004年第1四半期においては、契約ベースで日本を超えて第1位になっている。 第3に、2003年の中国国内市場の規模は、約2兆ドルに達した。2004年の輸入額は5,000億ドルを超え、貿易総額は1兆ドルを突破して、世界第3位の貿易国になる見込みである。 3つの数字を紹介したが、第1番目の数字は、中日貿易が拡大成長を続けていることを意味しており、2004年には1,700億ドルになることを積極的に評価すべきである。しかし、第2番目の数字の現象は懸念される。中日貿易の割合が低下し、しかもその下げ幅が大きく、第3位に落ちていることは、ゆゆしきことである。 第3番目の数字は、中国市場は拡大し続け、急ピッチで世界最大の市場が実現しつつあることを意味している。最近の中国人民日報は、第1面に大変興味深いニュースを掲載した。いわゆる中国の中級階層が8,000万人を超え、このスピードでいくと中級階層が、日本の人口を超えてしまうという記事であった。この階層は、購買力が大きく、まさに中国市場の現状を示している。 中国市場へのアプローチ 世界各国が、中国市場に注目し進出のため努力しているが、最近の例を2つ挙げる。1つ目は、フランスのシラク大統領が訪中したが、その際、大勢のビジネスマンも同行し、中国政府との間に経済関係の協定を20ほど調印した。シラク大統領は、特に高速鉄道と原子力発電の2つの分野について、全面的に技術移転をすると中国の指導者に説明し、積極的な姿勢を中国国民に対してアピールした。 2つ目は、ロシアのプーチン大統領が訪中し、2010年までに年間の中ロ貿易総額を800億ドルとすること、2020年までに中国はロシアに120億ドルの投資をし、エネルギー、核の平和的利用、ハイテクの3つの分野での協力を行うことに合意した。 このような動きをみると、中日の経済関係は、大変良好な状況を保っているが、中国の市場としての大きな潜在力を考え、かつ他の諸外国の動きと比較すると、もう少し日本の皆さんとともに努力をしなければならないと思う。 この中日の経済関係の中で、最も注目する点は、中国の貿易相手先別で日本が3位に落ちたということである。これは、さまざまな経済的な原因があるのかもしれないが、総合的にみると、やはり今言われている「政冷経熱」、すなわち政治が冷たく、経済が熱いというこじれた現象がその背景にあるのではないだろうか。一刻も早く克服しなければ、このような傾向はまだ続くであろうと心配をする。 「政冷経熱」の現象が生じている原因は、私の方から言わなくとも、皆様はよく承知されていることと思う。中国は、歴史問題にこだわっているわけではない。私ども、歴史を鏡にして未来を切り開きたいと思っている。しかしながら、国民感情を損なうような事が発生すると、注意は歴史に引っ張られる。中日関係の根底にかかわる問題として、中日共同声明の原点に戻り、正しい政治決断をされることを期待している。 東アジアにおける経済協力の推進力 東アジアの経済協力の大きな推進力は、10+3、すなわちASEAN10と中日韓である。10+3は、1997年にASEAN創設30周年を記念して開催され、その後定例化されて8年が経過している。10+3では、相互の友好協力関係の強化、地域の平和と安全環境作りを推進し、17の協力の分野が設定されている。 例えば、貿易面では、東アジアにおけるFTAの学術的な研究がスタートし、東アジアサミットの開催の可能性についても積極的に検討されており、2005年にはマレーシアで第1回目の会議が開かれる見通しとなっている。 10+3は、1つの大きな枠組みで、その中に3つの10+1がある。すなわち、ASEAN10+中国、ASEAN10+日本、ASEAN10+韓国である。この3つの10+1もそれぞれ活発に活動しており、例えばASEAN10+中国は、率先してFTA交渉をスタートさせ、日本も韓国もそれに続いている。中国とASEANのFTA交渉は、順調に進んでおり、物品貿易に関する交渉は終了している。サービスと投資に関しては交渉中であり、年内合意に達することができない場合、2005年以降に交渉が持ち越される。11月末ラオスで開かれる10+3の会議において、おそらく中国とASEANは物品貿易に関する協定に署名し、2005年1月1日から中国とASEANのFTAは正式にスタートする。現在の目標は、2010年までにASEAN原加盟国の関税を撤廃し、新規加盟国のベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアは、5年延長して2015年としている。なお、タイ、シンガポール、マレーシアは、2010年を待たずに、繰り上げて関税を撤廃する見通しが強くなってきている。また、ASEANの得意な農産物に対するアーリーハーベストは、すでに実施されており、タイとは2003年10月から果物の関税をゼロにしている。 10+3のうちで中日韓の協力は、すでに14の分野で展開されており、8つの大臣レベルの会議のシステムを作っている。中日韓の指導者は、11月末のラオスで、初めて3ヵ国の協力の行動計画を策定、発表する。中日韓の協力では、FTAが1つの課題になっており、今までは、3ヵ国政府がそれぞれに指名した学術機関により、合同で検討がなされてきたが、中国はこれを次のレベルに高めることを提言し、日本政府の回答を待っているところである。 東アジアにおける協力のあり方 東アジアにおける協力を推進する場合、いくつかの重要なポイントがあるので、ご紹介したいと思う。 第1に、東アジアの協力推進には、経済協力が不可欠である。10+3の13ヵ国は、経済協力を基盤にして関係を構築し、経済から政治、安全保障にその関係を広げていく。これは、健全な協力の進化、拡大の方法であると考えている。したがって、13ヵ国は、経済協力により共通利益を拡大し、相互信頼関係を醸成することで、政治、あるいは安全保障に関する対話が自然にできるようになる。 第2に、東アジアの協力では、当分の間、ASEANがリードすることを奨励する。10+3では、10のASEANが数としては多いが、経済的にみると、3の中日韓が、はるかに経済力があり、中日韓だけで東アジアの経済力の8〜9割程度を占めている。したがって、ASEANの国々は、警戒心とまでは言わないが、中日韓の動向に注目している。やはり、東アジアの協力の安定的な推進のためには、ASEANがリードした方が、東アジアの全体の利益になると認識している。 第3に、東アジアの協力の目標として、東アジアの共同体を形成することが、ほぼコンセンサスになっている。ただし、この東アジアの共同体の内容は、まだはっきりしていない。少なくとも経済協力は、大きなウェートを占めると思う。 第4に、3つの10+1のお互いの関係であるが、率直に言うと、積極的に競争し合って、同じ目標をめざすことが、健全な姿であると思っている。 第5に、10+3という大きな枠組みの中で、中日韓の協力を進めてきたが、これから、どのような方向に向かうかということである。当分の間は10+3を継続するが、中日韓は、おそらく北東アジア地域との関係から、徐々に独自色を持つようになるのではないかとみている。その場合、中日韓だけではなく、モンゴル、北朝鮮、ロシアのシベリアの部分も北東アジアの範囲に入るので、経済関係を深めることになると思う。 最後に、東アジアの協力を推進するにあたっては、中国と日本との関係が要になる。お互いが、どのような役割を果たすか、あるいはどのような関係を保っていくかが、これからの東アジアの共同体の動きを実現できるかどうかにあたり、大変重要な要素になるとみている。東アジアの中で、経済力は日本が第1位で、次いで中国となっており、中日関係は、地域的に大変重要になっている。したがって、健全な中日関係は、両国だけでなく、東アジア地域の将来を左右していくものであり、東アジアが、EUと同じような経済体になるかについては、まさに中日関係に委ねられていると思う。 中日両国は、良好な関係維持のため、あるいは東アジア地域のためにも、ぜひお互いに尊重し合い、ともに努力して、1日も早く今の困難を乗り越えて、健全な中日関係を回復できることを心から祈念している。
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