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関西財界セミナーにおける王毅大使の講演――中国の発展と中日関係の未来について
(二〇〇五年二月三日)

 

 今日私は中国の発展と中日関係を中心にお話を進めたいと思います。まずは中国経済の現状と見通しについてであります。

 中国は改革開放26年来、経済と社会発展の面において、大きな進展を遂げました。GDPが1978年の1400億米ドルから2004年の1兆5000億ドルに増え、年間成長率が9.4%で、経済規模は世界6位まで上がりました。貧困人口が2億5000万人から3000万人弱に減り、人々の生活が一応ゆとりのあるレベルに達しています。輸出入総額が1978年の206億ドルから2004年の1兆1500億ドルに増え、世界三番目の貿易大国になっています。外貨準備高は1978年の1億ドルあまりから2004年末の6099億ドルに増え、お国に次いで世界第2位です。携帯電話利用者数が3億を超え、世界1位で、高速道路が3万キロを超え、インターネット加入者数が1億に近く、いずれも世界2位です。

 一方で、中国は人口が多く、経済基盤がまだ弱く、生産力が十分に発達しておらず、現代化を実現するにはまだ長い道のりがあります。改革と発展が深まることにつれて、一部の深層的、構造的問題も出てきております。

 たとえば発展のアンバランスの問題、とりわけ沿海地域と内陸地域、都市部と農村部の発展の格差が大きいです。二つ目はいわゆる「三農問題」、つまり農民、農村と農業の問題で、農民収入の伸びが鈍く、農村の発展が遅れ、農業の基盤が弱いこと。三つ目は資源と環境の問題で、去年石油の輸入が1億2000万トンで、対外依存度が40%となっています。主な工業製品のエネルギー消耗が経済先進国より30%以上多いです。資源の利用率はわずか先進国の10分の1ひいてはもっと低いです。それによる環境汚染も持続可能な発展にマイナスの影響を与えています。そのほかに、中国の人口が13億を超えており、就職人口と高齢者が同時に増え、雇用と社会保障などの問題はまだ解決の途についたばかりです。

 中国が26年間の高度成長を維持して、人類発展史上に奇跡を作り出しました。ところで、今申し上げた困難やチャレンジを乗り越えて、引き続き健全、安定的かつ速いスピードでの成長を維持していけるのか?これは中国の未来に関わっており、世界経済の行方にも影響するものなので、日本を含む各国から大きな関心を寄せられております。日本の高度成長が1955年から1970年代の前半まで、大体20年ぐらいです。中国の高度成長も大体これと同じもので、2008年の北京オリンピックで止まるだろうという見方がありますが、私は、中国の高度成長は今後とも相当長い間続けていくものだと思います。いろいろな理由がありますが、主に次の三つをあげたいと思います。

 第一は、中国には大きな市場の潜在力を秘めています。世界主な国々の工業化の道を見れば、経済発展への最終的なネックは資金や技術ではなく、マーケットであります。東アジア一部の国や地域が高度成長を長く続けられなかった原因は、国内マーケットに限界があり、国際マーケットも不確実な要素が多く、それをコントロールすることができないわけです。中国の場合は状況がだいぶ違い、中国自身が世界最大のマーケットであり、その潜在力がアメリカの5倍、日本の10倍に相当します。しかも、違う地域、違う所得階層の消費構造が多重性を持ち、沿海部から内陸部へ、裕福な地域から遅れた地域へ、都会から農村へと波のように進んでいます。最新の統計によれば、中国沿海地域のいわゆる中産階層がすでに8000万人以上にのぼり、こうした人たちはマイカーやマイホーム、海外旅行のような現代的消費をはじめております。一方、中西部地域ではまだまだ伝統的消費が旺盛に続いています。従いまして、国民生活レベルの向上と中西部大開発、東北地域振興などの戦略の推進にともない、中国は今後とも相当長い間持続的に旺盛な内需を保ち、この世界の最大な市場の潜在力が次第に現実なものに変わっていくでしょう。

 中国のマーケットは、世界にとっても重要な意義があります。去年、中国の輸入額が5613億ドルで、前年比36%増えており、この勢いで行きますと、2010年には輸入規模が少なくとも1兆ドルにのぼる見通しです。現在中国経済の成長が世界経済への貢献度が20%で、世界貿易への貢献度が12%に達しています、いずれもアメリカに次いで世界第二位です。「中国特需」はますます世界経済成長の重要な源となり、特にアジアにおいては、日本を超えて、中国がすでに本地域最大の輸入市場となっています。中国市場が絶えず拡大していくことは、本国経済が持続的に成長する重要な支えを提供し、そして、アジアひいては世界経済発展の重要な原動力にもなるでしょう。

 第二の理由は、中国は豊富かつ良質な労働力資源に恵まれています。去年中国都市部と農村部の労働力が7億4000万人にのぼり、都市にでる出稼ぎの人が1億近くおり、そのほかになお1億5000万の農村余剰労働力がおります。中国労働力のコストはわずか日本や欧米の20分の1に過ぎず、しかも今後長い間大きな変わりはないでしょう。それと同時に、中国労働力の素質はどんどん向上しています。16才以上の中国人の中で、中学校以上を卒業した人は60%を超えており、毎年卒業する大学生は300万人にのぼっています。良質で安い労働力は、中国経済競争力の源の一つであり、外国直接投資を呼び込む重要な要素でもあります。去年中国は600億ドル以上の外国直接投資を誘致して、世界第二位となり、3年間連続して世界直接投資自信指数ランキング1位となっています。世界で上位500社企業のうち、400社以上が中国で投資しており、600あまりの地域本部や研究開発センターを設けています。中国が「世界市場」になるとともに、「世界工場」にもなっていくでしょう。

 第三の理由は、中国政府は国の実態を正確に把握した上で、これからの経済発展を妨げる主な問題を解決するために、一連の新しい方針と政策を打ち出しました。その中で、最も重要なのは、科学的発展のコンセプトで、即ち人間を本位とし、経済と社会の全面的、調和の取れた、持続可能な発展を推し進めていくことであります。少し具体的に言いますと、都市部と農村部、沿海部と中西部、経済と社会、人間と自然、国内と国外の調和を目指しております。もっとも解決しようとする核心的問題は三つあります。一つ目は、発展のアンバランスを緩和し、解消していくことであります。アンバランスは各国が発展していく過程で現れる普遍的な問題です。中国の場合は、条件の整った地域を先に発展させ、そして豊かになった地域にほかの地域を支援させる道を歩んで来ました。この道は大成功をおさめしましたが、同時にアンバランスの問題も大きくなっています。今になって、国の財政力からにしても、社会の受け入れ能力からにしても、この問題を解決する時期に来ていると思います。中国政府は既に政策と資金の面から、中西部地域に傾斜して、より全面的な発展を目指しております。

 二つ目は、今まで主に資源の投入と投資の牽引に頼る外延拡張型の経済成長方式を改めること。つまり、科学技術の発展をもって経済成長を引っ張り、情報化をもって工業化を引っ張り、効率の向上をもって経済仕組みの調整を推し進め、それを通じて資源節約型、経済循環型、環境保全型の持続可能な発展を図っていきます。

 三つ目は、発想を転換して、単純にGDPを追求する従来の評価システムを調整します。経済を発展させると同時に、社会の進歩を追求し、和やかな社会を作り、人間と自然の調和を図り、グリーンの国民経済清算システムを模索し、より調和の取れた発展を求めて行きます。この科学的発展のコンセプトは中国と世界その他の国々発展の経験や教訓を総括したもので、中国政権党の意志と政府の政策であるのみならず、全国国民のコンセンサスにもなっております。

 以上中国経済発展の現状と見通しについて、私なりの見方を皆様に紹介しましたが、中国はいよいよ成長し、その発展の目標が達成されれば、世界各国とりわけアジアの近隣諸国とどう付き合っていくのか、と皆様が自然に思われるでしょう。学者の間に、数百年来の世界史を振り返ってみれば、国が強くなると、往々にして対外拡張をしたり、覇権を唱えたりしています。そして、彼らは、中国も若しかして、同じ道を歩むのではないかと心配しています。私の答えは、中国は強くなってから覇権をやりはじめ、覇権をやると国が衰えてしまうような今までの大国の道を絶対にまねしません。その理由はまた三つをあげたいと思います。

 一つ目は、中国は対外拡張の伝統がありません。2000年前から、中国はすでにアジアの大国であり、歴史上においていろいろ変遷や変革もあったが、基本的には領土の拡張をもって国を大きくするような伝統はありません。それで、古代中国は孔子、孟子の教えをもって、外国への影響力を維持し、拡大してきました。古くから「和を貴しと為す」、周りの人々との調和を重視してきました。そして、「親仁善隣」を主張し、つまり仁義を大事にし、隣国と仲良くすることです。中国語の「武」はそもそも戈を止めるという意味で、即ち武力を使うとしても、あくまで戦争を止めさせ、平和を守るためということです。そして、「厚往薄来」という言葉もあります。つまりあげるものが厚くて、受けるものが薄くてということです。

 今からちょうど600年前の明の時代に、中国の航海家鄭和が当時の世界で最強の艦隊を引率して、七回にわたり西洋に下り、そのうちマラッカに五回も駐屯して、一番遠いところはアフリカの西海岸まで足を運びました。正にマレーシアのマハティール前首相が指摘したように、鄭和氏は欧米の植民者と違い、侵略もしない、略奪もしない、かえって友情を深め、文化を伝播し、物の有無を通じていました。このような徳を持って、隣国と仲良く付き合う伝統は、中国の文化として中国人の心に浸透し、綿々とつながってきています。今の中国もそれを受け継いでおります。そして、アヘン戦争以降、中国は西側列強に侮られた経験から、己の欲せざるところ、人に施すこと無かれという信念も中国の人々の心に根を下ろしております。

 二つ目は、平和と協力は中国外交の基本的な方向であります。中国が国際社会と交流する時に、各国との共通点を探求しております。つまり、中国の発展をアジアの振興と一致させ、中国国民の利益を世界大多数の国々の国民の利益と一致させ、中国の外交政策を時代の流れと一致させ、中国の進路を歴史前進の方向と一致させるように努力しております。われわれは一国主義に反対して、国際関係の民主化と開発モデルの多様化をアピールしております。われわれは、世界の平和を維持するためには、まず安定的周辺環境を作っていく必要があると考えております。そのために、中国は隣国同士との関係をもっとも重要視し、中国外交の首要な位置につけております。われわれは善をもって付き合い、隣国を仲間と見なすことを中国の周辺外交の基本方針と定められております。具体的には、善隣、安隣、富隣(即ち隣国と友好的に付き合い、隣国を安心させ、安定した関係を作り、そして、隣国と共に豊かになる)の政策をとっています。互いに尊重し合い、助け合い、理解しあうような関係を作っていきます。近年来、われわれは協力の重要性を一層強調しております。協力を通じて平和を守り、協力を通じて発展を促し、協力を通じていろいろな摩擦や矛盾を解決していきます。

 三つ目は、平和発展を目指すことこそ中国の正しい選択であります。中国は経済のグローバリゼーションの中で発展しています。対外貿易額はGDPの70%を占めており、世界主要国の中で一番高い割合です。毎年誘致した外資は中国固定資産投資の一割強となり、外資系企業による輸出は輸出総額の60%以上を占めております。去年中国の出国と入国者数がのべ1億3000万人で、そのうち海外に出かけた中国人が3000万人に近いです。世界観光機関は、10数年後中国の海外旅行者数が1億人を上回ると予測しています。

 以上の数字が示しているように、中国は世界との間で、ますます依存しあい、切り離せない関係となりつつあります。中国の発展につれて、こうした相互依存関係がより一層深まっていくでしょう、要するに、中国の発展には平和と協力の世界が必要であり、そして世界の発展にも安定と繁栄した中国が欠かせない構図となっております。中国は既に京都議定書を含む殆どの国際条約に加盟しております。われわれはルールの策定に参加し、ルールが定めている義務を履行し、ルールの制約を受けております。中国はこの平和発展の道をこれからも堅持し、変えることもありません。

 もう一つ強調しておきたいのは、中国は未だに発展途上国であり、われわれ現在のGDPがわずか日本の3分の1で、一人当たりのGDPが日本の30分の1にもなっていません。今の成長率で行くとしても、中国一人当たりのGDPが日本現在のレベルに達するには、恐らく相当長い時間はかかるでしょう。

 以上のような考え方を一言にまとめると、つまり中国は伝統的な大国と違う発展の道を歩んでいこうということです。これは中国国民のためにもなりますし、世界の人々のためにもなります。そして中国国民から支持されますし、世界の人々からも歓迎されます。私たちは既にいいスタートを切りましたが、今後とも引き続きこの方向に向かって努力していくつもりです。

 次は、中日関係に移りたいと思います。中日国交正常化して33年がたち、両国の諸分野における交流と協力は大きな進展を遂げました。去年人的往来が400万人で、平均にして毎日1万人以上が両国の間で行き来しています。正式に署名した姉妹都市が226組で、そのほかにも数え切れないほど様々な友好交流が広げられております。特に大事なのは、経済的に、両国は既に相互依存関係を築き上げていることです。去年両国の貿易額が1678億ドルにのぼり、日本の対外貿易総額に占める中国の割合は1990年の3.5%から去年の15.8%に上がり、もし香港を入れて計算しますと、中国は既にアメリカに代わって日本最大の貿易相手国となっています。これに対して、中国の貿易総額に占める日本の割合が14.5%となっていますが、日本の貿易総額に占める中国の割合と一段と近づき、中日間により均衡の取れた相互依存関係ができつつあることを物語っています。

 いわゆる「中国特需」は日本経済の成長を引っ張っていく重要な要素となっています。2003年、日本輸出の増加分の3分の2ぐらいが対中輸出によるものでした。3万社近くの日本企業が中国に進出しています。日本側の調査によると、9割以上の日本企業が中国を第一の投資先としています。そして、中国で投資している日本企業のうち、8割以上が利益を出しており、中国での子会社の収益が本社収益の重要な源となっています。中日両国は経済発展の段階が違い、相互補完の側面が競争をはるかに超えています。お国の権威のある機関が両国の貿易構造を研究した結果、競争となっているのはわずか20%足らずで、80%以上が補完的なもので、しかも競争の部分でもその大半が良性なものであります。中国の発展は日本にとって脅威ではなくてチャンスであると、ますます大勢の人々がこのような認識を共有するようになっており、ご来場の皆様からも賛同していただけると信じております。

 中日関係は全般として発展し続けていますが、しかし問題も抱えており、一部はすでに両国関係の正常な発展に影響しております。いわゆる「政冷経熱」という言い方がありますが、この表現自体が正確かどうかはともかくとして、両国は経済の面では相互依存関係が絶えず深まる一方で、政治の面では摩擦がかえって増えており、人的往来が日増しに頻繁になる一方で、国民感情が逆に冷める傾向にあることは否められない事実でしょう。

 中日の政治関係と経済関係がなぜバランスよく発展できないのか?私に言わせますと、その原因はいろいろありますが、過去のあの不幸の歴史に正しく対処できるかどうか、中国国益の核心的部分の台湾問題を善処できるかどうかなど既存の問題が存在しているほかに、より大きな背景から見れば、中日関係が現在歴史的な転換期と過渡期に入っているのではないかと思います。この段階の特徴の一つは、両国が置かれている外部環境が大きく変化し、冷戦時代の共通した戦略的需要がもはやなくなり、一方で新しい共通利益がまだ完全に確立されておりません。二つ目は、両国はそれぞれ大きな調整と改革を進めておりますが、お互いの理解が欠けているので、相手国をどのように戦略的に位置付けるか未だに固まっていません。ある要職についている日本の友人の話によれば、日本は中国の発展にどう向き合うかという課題に直面しています。前世紀80年代に、経済力がどんどん拡大する日本に対して、アメリカは抵抗感を持ち、ジャパンパッシングひいては日本脅威論も一時的にはやっていました。そして現在は、絶えず発展している中国に対して、日本がある程度心の準備がまだ十分にできていませんという話でした。

 こうした大きな背景の下で、中日間の現存する問題の解決が難しくなる一方で、新しい摩擦や利益の衝突も増えており、両国関係はより複雑な局面に直面しています。

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