| 「東方文化を高揚し、調和のとれた世界を築こう」――立命館孔子学院における王毅大使の講演 |
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| 2005/11/17 |
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この度、立命館大学を訪れることができて、たいへんうれしく思います。また、日本で設立された最初の孔子学院で特別講演を行う機会に恵まれ、光栄に存じます。
立命館大学の名前は孟子の教えにもとづいて生まれたものです。孔子と孟子は共に、儒教の代表的存在であり、儒教の学説は次第に東方文化の中で最も代表的思想と哲学体系となっています。よって、本日私は「東方文化を高揚し、調和のとれた世界を築こう」をテーマにお話したいと思います。
孔子と孟子が共に打ち立てた儒教は、中国古代の政治、経済、文化、教育ひいては社会生活、風俗習慣などに広く、深く影響を与えました。その中で時代の要請に合った多くの精華は、今なお中国の人たちに実行されており、目に見えない形で中国人の思考習慣と行動様式に影響を与えています。
数千年に及ぶ中国と周辺諸国の友好交流史の中で、儒教の学説も海を渡り、東アジアおよび世界各地に伝わり、各国の先進的な文化と結びつき、お互いに長所を取り入れ、短所を補い、共に発展するという交流の循環が形成されました。儒教は文化面、精神面で中国と周辺諸国を結びつける重要な絆となり、文明の対話と交流を促し、中国と東アジアの発展、繁栄を推し進めるうえでも、独特で積極的な役割を果たしたと言えるでしょう。
史書の記載によると、儒教は紀元前3世紀に朝鮮に伝わり、西暦1世紀にベトナムに、3世紀前後に日本に伝わりました。それ以後、続々と東南アジアひいてはもっと遠い国に伝わりました。多くの国の文明発展の過程で多かれ少なかれ、儒教と影響しあい、学びあった例がよく見られます。日本の最も古い学校寺子屋から江戸時代の藩校まで、教材の多くが儒教の古典でした。孔子の「論語」も時の日本上層社会の人々が精通していました。聖徳太子が公表した17条憲法の第一条は「論語」の中の名言「和をもって貴しとなす」をそのまま引用しています。17世紀の江戸時代、儒学者伊藤仁斎は「論語」を「宇宙一の本」と推奨しました。
儒教思想は西暦17世紀、ヨーロッパにまで伝わり、ヨーロッパで中国文化ブームが沸き起こり、近代ヨーロッパの社会変革、特に啓蒙思想家の人々に貴重な精神的資源をもたらしました。1793年のフランス革命で起草された「人権と市民権宣言」は孔子の言葉「己の欲せざるところを、人に施すなかれ」を引用しています。ヴォルテールやライプニッツなど多くのヨーロッパの思想家は孔子の教えを推奨していました。ヘーゲルの弁証法も中国儒教の弁証哲学を参考にしています。米国の漢学者、ヘルリ・ジョージ・クリールは「孔子と中国の道」という本の中で、儒教哲学はフランス革命の民主理想の発展に積極的役割を果たし、これを触媒にアメリカの民主主義の発展にも間接的影響を与えたと記しています。
儒教の現代社会における価値がアジアの台頭によって、改めて重視されるようになっています。1970年代、80年代から、日本やアジアの「四つの竜」、東南アジアの「四つの虎」と呼ばれたNIES(新興工業国・地域)および中国の台頭で、アジア経済が躍進した文化的背景が研究され、儒教思想を初めとする東方文化の価値とアジアの近代化との関係を再認識することが国際的に盛んになっています。1980年代以降の東アジア経済発展の背後には、数千年の東方文化の蓄積と支えがあったからだと言われています。日本の学者森島通夫は「日本はなぜ成功したか」という本の中で、「新儒教」と東アジア諸国の経済成功の関係を研究し、総括しています。近代的企業管理で有名な実業家、渋沢栄一は、近代企業はそろばんと「論語」を基礎として築くべきだと書いてあります。シンガポール国立大学の陳栄照教授は、儒教精神がシンガポールの経済的躍進を促したと主張しています。
21世紀に入り、儒教が一層国際学術研究のブームになり、東アジア各国・地域で一連のシンポジウムが開かれました。統計によると、現在、世界には1300カ所余りの孔子廟があり、26の孔子学院が設立されています。千年の伝承と各国の先進的文化との融合を経て、今日の儒教は中国のものだけでなく、東方文化の重要なシンボルの一つとなり、人類の思想文化の宝庫を成す重要な一部分にもなっています。
儒教学説は広くて、深く、内容も豊富で、国家、社会、家庭、自然および人間に対する基本的な見方や要求をカバーしています。もっとも、儒教が最終的に追い求める目標は「仁」を中核とし、「徳」を基礎とし、「礼」を規範とし、「調和」を目指す理想的境地であります。従って、儒教文化の終始変わらぬ特徴は、「和」の一言に集約できると言えます。
「和」は儒教の真髄であります。
「和は、天地の正道なり」、「徳は和より大なかれ」、「和をもって貴しとすることは、先王の道なり、これを美となす」。
「和」の第一義的意味は人と人の調和である。「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」とし、「人の和」を際立った位置に据えています。
「和」の価値は人間と自然の調和にある。「天人合一」が強調するところは人と自然の調和、統一であり、人間は最終的に自然の法則に従わなければならないことを示しています。
「和」の現われは「中庸の道」を行うことである。「己の欲せざるところを、人に施すなかれ」であります。
「和」の境地は「和して同ぜず」である。「和」のために「和」するのではなく、「和しても流されず」、必要な時には「小異を捨てて大同につく」と説いてあります。
「和」の根底は「仁」がある。民を本位とし、仁政を施すことを強調しています。中国昔の政治家は「老者は之を安(やす)んじ、友は之を信じ、少者は之を懐(なつ)けん」を、国を治める理想的な形としています。
「和」を対外関係に広めれば、「親仁善隣」、「徳をもって隣となす」、「近くの者悦べば、遠くの者もきたる」と説いてあります。
全体的に「和」の本質的要求は、さまざまな複雑な物事の間で均衡を把握し、各種の利益を調整し、最終的に調和を実現することであります。
数千年間、こうした調和の理念は練り上げられ、中国の文化伝統に根ざし、社会生活にも浸透し、中華民族を、平和を愛する民族にしました。世界に知られるシルクロードはアジアとヨーロッパを千年も結ぶもので、運ばれたのは中国の絹や陶磁器であり、名実共に平和の道であります。中国明代の航海家、鄭和は当時の世界最大の船団を率いて、7回にわたり西洋を航海し、そのうち6回が東南アジアに立ち寄り、最も遠くは北アフリカまで足を運びました。持って行ったものは貿易と物産であり、伝えたものは友情と文化であり、戦争や植民地支配ではなかった。中国の歴史上、最も有名な、この2つの外部世界との交流は中華民族の平和精神を示し、儒教文化の調和という特徴を表しています。これは儒教文化が武力に頼らずに遠く海外に伝わり、また周辺の多くの国が受け入れる基本的な理由でもあります。
現代中国の独立自主の平和外交政策には、平和理念根底もあります。中国は軍事同盟や軍備競争に参加せず、勢力圏を求めず、海外に軍事基地をつくらず、核および大量破壊兵器の拡散に反対し、核兵器の全面禁止と完全廃棄を主張し、非核国と非核地域に対して核兵器を使用したり、威嚇したりしないと無条件で約束しています。中国は善をもって隣国とつきあい、隣国をパートナーとするアジア外交方針を取り、隣国と仲良くし、隣国と安定した関係を築き、隣国を豊かにする周辺外交政策を打ち出しています。中国は外交の中で協力に重点を置き、協力によって平和をはかり、協力によって発展を促し、協力よって問題を解決することを追求しています。このため、中国は6カ国協議を積極的に促し、朝鮮半島の非核化および平和安定のために斡旋して、核問題を対話の軌道に乗せました。
新たな情勢の下、胡錦涛を総書記とする中国の新しい指導部はこれまでの内外の経験を踏まえ、国内的には調和社会の構築、対外的には調和世界の構築を主張しています。そして平和な国際環境を築くことによって、自らの発展をはかり、また、自らの発展によって、世界平和を促すと強調しています。調和を目指すことをわれわれの内外政策の基本目標とすることは、中国文化の真髄の高揚であり、中国の特色ある社会主義の着目点と一致し、時代の潮流と一致し、人類文明進歩の方向と一致し、世界各国国民の根本的利益と一致します。
今日の中国は、中国共産党の指導のもとで、心を一つにして、ゆとりのある社会作りに専念しています。中国の迅速な発展と近代化は中国国民だけでなく、アジアと世界の人々にも利益をもたらしています。同時に、急激な変革の中で、多くの新しい矛盾に直面し、多くの新しい問題を抱えています。人間を本位とし、民のために政権を運営する理念、及び持続可能な発展を目指すため、新しい中央指導部は調和社会の構築を打ち出しています。要するに、経済の成長と社会の発展、都市と農村、沿海部と中西部、人と自然、国内と国外という5つの調和の実現に取り組んでいきます。目標は民主法治、公平正義、誠実友愛、活力に満ち、安定で秩序が守られ、人と自然が調和した社会を築くことであります。
世界を見回せば、グローバル化、情報化の流れが急速に進み、社会の繁栄と進歩が随所にみられます。一方で、局地的戦争や衝突、大きな貧富の格差、環境や生態系の危機、繰り返されるテロなどが人々の生活を脅かしています。こうした情勢の中で、多くの人が現在の世界的問題を解決するうえで、儒教と東方文化の価値を真剣に考えています。調和世界の構築という目標は、近隣諸国の間の友好共存、異なる社会体制の間の平和共存、違う文明の間の調和共存に役立ち、よって地域と世界の平和と発展に寄与します。
中日両国は一衣帯水の関係にあり、それぞれが東方文化の形成と発展に重要な貢献をしています。共に儒教の影響を受けた2大文化体系として、両国の文化には共通点もあれば、相違点もあります。主な共通点は、共に「和」を重視し、「和」の地位と役割を強調していることであります。そして「和」を実践するために、双方とも「信」を重んじ、それを大事にしています。中日国交正常化の際、周恩来首相は「言に必ず信あり、行えば必ず果たす」と述べました。これに対して、田中角栄首相は「信は万事の本」と答え、相互理解と相互信頼が中日友好にとって極めて重要であることを示しています。
こうした「和」の精神を中日関係に照らせば、即ち両国間の交流の優れた伝統を受け継ぎ、互いに尊重しあい、理解を増進し、約束を守り、歴史を鑑とし、未来に目を向けることによって、中日関係を早く健全な発展の軌道に乗せて行くことであります。
こうした「和」の精神を広げて、アジアの振興に照らせば、即ち国の大小を問わず、すべて平等と、互恵でもって共に発展し、協力によって未来を開くことであります。
こうした「和」の精神を人類文明の進歩に照らせば、即ち発展モデルの多様化を尊重し、国際関係の民主化をはかり、平和を保ちながら、公正かつ合理的な国際秩序作りを推進し、最終的に調和のとれた世界を築くことであります。
今日、人類社会が大変動する時代にあり、源をさかのぼり、伝統を高揚し、互いに学びあい、革新を進めることは、グローバル化の挑戦に立ち向かううえで賢明な選択となります。儒教は東方文化遺産の一部として、絶えず取捨選択し、優れた所を取り入れ、時代と共に前進していく必要もあります。東方文化の伝統を高揚し、先達を受け継ぎ、後世に恩恵をもたらし、われわれの子孫たちがより平和、友好かつ繁栄な世界で暮らせるために、共にがんばっていこうではありませんか。
ご清聴ありがとうございました。
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